21枚の栓の皿
作家 小倉広太郎さんがその背景をお話くださいました。
ちょうど1年前の木材の競り市で、1本の丸太を6枚の板に製材した栓の板に出会いました。
僕にとってはとても魅力的な木目で、きっとかなり競り合うと思いましたが、幸いな結果は僕1人のみ。
全て買い取ることができました。
その時は重すぎて持って帰れず、1カ月近く材木屋の土場で雨晒しになっていました。
材を引き取ってからしばらくは使わなかったのですが、とにかくリムのある皿が作りたくて仕方がなくなり、
昨年秋の個展の会期中にあの栓のお皿を作りました。
実際に切って使ってみると、その栓は1枚の板なのに場所によって様々な表情を見せてくれました。
送った21枚のものを見ても分かると思いますが、一枚一枚の色や木目、割れなど個性が際立っています。
それは材木屋の土場で1カ月雨晒しだったことも大いに関係があり、暖かい季節の雨で濡れて部分的に黴や菌が付き、
それが原因で変色したからです。
3月の展示会でもたくさんこの栓で作品を作りました。
この栓1つで世界観を作り出せたと思えるほど良いものでした。
その2つの展示会でもこのお皿は好評で、気がつくと6枚あった大きな板は残り1枚になっていました。
この最後の1枚は樹皮に近い部分で特に木目の良い板でした。
何を作ろうか逡巡していたところ、里依さんとまさくんがこの皿を見たい、と言ってくれました。
そして気に入ってくれたこともあり、今回の展示会であればこの1枚を全て使うにふさわしいと思い、作った次第です。
木を触っていると、その木は当然自分たちより長い生命を生きていたので、
否が応でも長い時間軸で物事を捉えるようになってきた、とふと思います。
小さな端材は少し残っていますが、1つの丸太全部を使わせてもらった木への感謝の気持ちがおおいに含まれた作品です。
皆さんに見ていただけるのが楽しみでなりません。
小倉 広太郎