TALK TO ME

eve01

eve02
TALK TO ME デザイナー・池邉祥子の言葉

その言葉を辿っていると、まるで彼女が作り出す衣服に袖を通し、その質感を肌で感じているかのようです。
展示会でお洋服と出会われる前に、ぜひご一読ください。

・質感について
いつからか分からないけれど、生地を追い求めるようになった。

生地の質感を捉えることは香りを嗅ぐ行為と似ている。これは何物にも代えがたい、
と感じた素材は手のひらと指先で触れた瞬間、脳の奥の方がきゅっと締まり、そして緩む感覚がある。
(ある種の快楽と快感にも近い)

それらは「記憶に残る」体感で、香りのようにふわっとしているがしっかりと私たちのなかに留まる。

・洋服の形と服作りのあり方について
産地をまわって生地をみて、素材を追い求めているが実はそれ以上に形を捉えることに多くの時間を要している。

デザインを生み出す方法はいくつかあるけれど、
一番楽しいのはそのデザインを美しく完成させるための構造を見つけ出した時。

ブランドの売り方も少し変わっていて、春夏秋冬では動かない。晴着とスタンダード、という着こなしで提案し
2~3年継続して発表し続ける商品もある。展示会は半分が旧作、半分が新作という感じだ。

ころころ変化させる過剰な制作体制を作っていない。その代わり1着にかける制作時間も長い。

ファッションとはいえない服作りの形かもしれないけれど、私にとっての制作と消費のバランスを考えた時、
自然とこういう構造にしたほうが良いものが出来るのではと思ったから。

でもそれも実験。実験しながら結果をみて、
微妙なところは精査して良くするため仮説を出して次に進めばいいなと思っている。

・60年前のテキスタイルの復刻について
着物の格子柄から着想を得て、当時は紳士服に仕立てていた。

まだ着物の文化が残る中で日本の格子柄とスーツの組み合わせはとてもモダンだったのではないだろうか。

この生地は3年前くらいに産地を回っていて出会った生地。何故かずっとこの生地を使ってみたいと思い、
今回はその念願が叶いブランドのために糸から復刻し織っていただいた。

糸は手紬の風合いを模した作りになっており、特殊な撚糸の技術で作り出している。

一見無地のように見えるけれど、光のニュアンスで見える格子柄が凛としている。

紳士服に使われていた生地で、女性が纏うには硬質な質感だがそれが今回の新作でどう着地しているか、
是非お袖を通して感じてみてほしい。

・シルクサテンについて
サテンは女性の肌そのもの。なめらかな質感は記憶に残る幸福感。

現代ではなかなか受け入られにくいサテンという素材だけど、
やっぱり女性を美しく見せる素材だと試着する女性たちの姿を見ていて確信する。

こんなに幸福感に満ちた素材はもっと多くの女性が着るべきだ、と。

今回使用した素材はシルクリネンのサテン生地。

マットな落ち着いた面と上品なあでやかさの2つの面を横断できる。

リバーシブルのサテンワンピースはシルクサテン側を裏面に肌で感じても、表に着ても。

オケージョンに合わせて自由に生きていくための1着。

纏った時の感覚と女性の身体を美しく見せるシルエットを是非ご体感下さい。